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建設業の人材難は、工数単価を元に戻して解決せよ!

   


この記事の所要時間: 521

継続王に、おれはなる!0320

昨日の日本経済新聞のこの記事を読んで。
建設人材難、経済に重荷 長期化・コスト増の懸念  :日本経済新聞

人材難でコスト増という論点はおかしい!
建設会社がボッタクっているような印象を受けたので、そんなに関係ない鉄工所のぼくが思ったことを書いてみます。

今までの異常な下請け叩きで作業員単価が底まで落ちているから誰もやろうとしないんです。

 

人材不足と業者不足の矛盾

記事にはこう書かれています。

厚労省が3カ月ごとに全国の建設会社に実施している調査によると、8月に人材が「不足」と答えた割合は全体の33%に上った。
「過剰」は4%で、不足から引いた数値はプラス29と94年以降で最高になった。有効求人倍率をみると建設作業員は7月に2.25倍となり、6年7カ月ぶりの高水準。
測量や型枠工など特殊な技能を持つ人材の不足感が強い。
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画像・記事引用:建設人材難、経済に重荷 長期化・コスト増の懸念  :日本経済新聞

この部分の記事だけ見ると、急な需要で建設会社に人手が足りないように見える・・・

でもこの記事には続きがあります。

被災地では人件費の高騰を背景に、国や自治体の予定価格に応じる業者が現れない「入札不調」が目立っている。岩手県の建設作業員の有効求人倍率は約6.6倍に跳ね上がった。

仕事があってもだれも取ろうとしないなんて!

ん?なんか矛盾していますね。

  • 建設会社には(特に測量や型枠工など特殊な技能を持つ)人材が不足している
  • 建設会社は国や自治体の仕事が合わないので受注しにいかない


建設会社は「人材が不足しているくらい忙しいのか」と思ったら一方で「国の仕事を取ろうとしない」。

この記事にはこの矛盾した2つの現実がごちゃまぜになっています。

 

鉄工所の加工単価の減少

ここで、中小零細鉄工所の業界を参考にします。

弊社おさだ工業所は製缶業と小型の建築鉄骨金物がメインです。
製缶とはいってもジュースのカンカンを作る会社じゃありません。
平べったく言うと企業間取引の鉄工所です。

最近、おさだ工業所では、今までは依頼されなかった元請会社から仕事を頼まれることが増えました。
理由を聞いてみると、今まで頼んでいた鉄工所が廃業してしまって頼むところが他にないとのことです。
その廃業された鉄工所は、例えば少人数でやりくりしていて、高齢化で体力も続かないだけでなく、次世代が跡を継いでくれない、または継がせないため、廃業に至った、というところが多いようです。
そんな例を何件か聞くような時代になりました。

言いづらいことなんですが、

今や鉄工所は「最低限の設備で1~2人の身内の従業員だけがご飯を食べれるだけでいい」というような加工単価まで下がっているようですね。(他人ごとじゃないんですけど)

そのような従業員1~2名の鉄工所とぼくたちのような10名近くの鉄工所では設備の規模や人件費などの固定費が根本的に違うので、はっきり言って別の業態です。
なので同じような小規模の加工を同じような単価ではなかなか厳しく感じます。
今まで頼まれていた鉄工所と同じような価格面での対応をできるようにするには、業態転換しないといけないでしょう。

おさだ工業所では今のところ適正な売上や利益が上がっていますが、このままではいつコモディティ化して価格面で限界が来てもおかしくありません。

「モノづくりを通してすべての人々に幸せを与えていく」会社になろうとしているのに、会社自体が無くなっては逆に社会悪になる。

鉄工所業界は今の仕事内容をブラッシュアップしながら一方で、価格競争の起こらないブルー・オーシャンを見つけていく時代に入っています。

 

浮かんでくる2種類の企業

話を戻しまして。
我々鉄工所と建設業は似ているようで違います。

しかし、上記の鉄工所業界のような理由で提示価格(単価)が底をついているところに仕事量だけ増えたところで会社はまわりません。
いわゆる「貧乏ヒマなし」「自転車操業」になることが見えているから。

国や自治体の予定価格に応じる業者が現れない「入札不調」が目立っている。

そこまで割に合わないところまできたんですね。
でも、割に合わないとわかっていても低価格の仕事の量は世の中に多くあるので、お金を回さないといけない会社はとにかく受注するために低賃金の人材の採用を増やす。

  • 割に合わない仕事を取らないところまできた建設会社
  • 割に合わなくても仕事を取らなければならない建設会社

先ほどの新聞記事ではこの2種類の企業の存在が浮かんできます。

 

価格を元に戻そう

ここには「人件費の高騰により入札不調」と書かれていますが、これは今までに底まで不健全に落ちた価格が、元の水準に戻るだけのことです。
その水準まで戻してやっと被災地で作業してくれる従業員が現れるのが現実です。

国や自治体の昔ながらの底をついた価格ではもはや入札に応じてくれません。
確保できない人材や建設業者を増やす為には、デフレで底をついた価格を元の水準に戻すことで解消するでしょう。
自転車操業覚悟の企業も健全な決算書に近づきます。

それは「コスト増になる」というイヤラシイ書き方ではなく、「需要と供給のバランスをとろうとする健全な経済活動」です。

 

国は優先順位を決めて

国や自治体にもお金がないことはわかります。

お金が無いのなら無いなりに、例えばこのようなマネジメントなどをしていくしかないでしょう。

  • 「復興・景気対策・五輪需要」の優先順位を決めて業者を順番に差配していく
  • 国や自治体が上手に財布の中身をやりくりして捻出していく

国や自治体が、業者に「この値段でお願い」と無理な価格でなすりつけるような時代は終わりました。

 

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@terukobayashi 小林輝之 ●溶接士免許から調理師免許まで幅広い経験をもつ福井県坂井市春江町の㈱長田(おさだ)工業所代表。 ●金属加工のワクワクを一般の方にも知ってもらいたいため、溶接キャラのLINEスタンプを作ったり、溶接工場をテーマパークにするプロジェクトを進めていたり、インテリアブランド立ち上げにとりかかっていたりしています。 Apple/読書/出版/経営/モノづくり/Amazon/ラーメンetc...

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